ふんわり王子と甘い恋♡



机の中に隠したコーヒー牛乳は、どんどんどんどんぬるくなる。


同じ空間にいるはずなのに。


夢見ていた、同じ教室内にいるはずなのに。


さっきだって一緒に仕事して、またあとでねって、言ったはずなのに。


またあとでに繋がることが、なにもない。


話すこともないし、一緒に作業をするわけでもない。


小さな幸せがくれたものは、その後の期待を大きくする。


大きくなった期待の分だけ、心は怯む。


なにもなくて、なにも出来なくて、なにも起きなくて。


心は沈む……



色んな係の人たちが出たり入ったり、みんなやっぱり忙しそう。


だけど私だけは、心のほうがよっぽど忙しい。



「つーかさぁ、衣装係ってどんなん作ってんだろうね。ヤマ、知ってる?」



もはや教室で休憩をしている雄介先輩が、床の後ろに手を着き雑談を始める。



「あー、Tシャツとハッピだろ?」

「そりゃそうだけど、色とかデザインとか」

「それは知らね」



ヤマって呼ばれる先輩は、さっき教室に入ってきた旗係の人。


山本、って呼ばれていた気がする。



「つーかヤマどこ行ってたの?」

「ん?渡り廊下」

「なんで?」

「1年女子に呼び出されたから」

「なになに、告白でもされちゃった?」



どんな話題にも食いつくあずりん先輩が面白くて、私とヨッコは顔を見合わせて笑った。



「ん?なに笑ってんのお2人ちゃん。そんなかわいい顔してるとあの辺の野郎どもに食べられちゃうぞ?」

「野郎どもって」



ヨッコはきっと、菊地先輩になら食べられてもいいと思っている。


そして私も同じく、フワリくんにならって。


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