ふんわり王子と甘い恋♡



「さ、とっととお行き。私も休憩終わったら衣装にまた戻んなきゃなんだから」



眉を寄せて、フワリくんは渋々図書室のほうへ歩き出した。


フワリくん、ほんとに戻ってきてくれるのかな……


ちょっと……不安。




「で?」

「え?」



フワリくんが見えなくなった廊下で、あずりん先輩の声が私に向いた。



「え?じゃなくて。で?」

「……。」



何を言われているのか……分からない。



「で?……とは?」

「だからぁ。どうなの、あいつとは」



あいつって……フワリくんの、こと?


どうなのって……



「さっきはなまっちょろい男とか言っちゃったけどね、いーやつなの。優しい男なのよ、実際は」

「……は、い」

「だからもし高橋がね、少しでもあいつのこと、」

「あ、佐伯ー!」

「……。高橋がね、少しでもあいつのこと、」

「シカトかよ!つーかお前衣装手伝ってんだって?衣装より旗手伝えよ!」

「……。高橋がね、少しでも、」

「俺今日会社説明会だったのに、旗遅れてるからってわざわざ戻ってきたんだかんな!」

「あぁ、うるさい雄介!どっか行け!」

「お、雄介じゃん。戻ってきたの?」

「……。」



1階から階段を上って来た雄介先輩の、後ろ。


絵の具の買い出しから帰ってきた山本先輩まで現れて、あずりん先輩の顔が恐ろしく引きつっている。


私の……目の前、で……


こ……怖い。



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