ふんわり王子と甘い恋♡
「似合うね、これ、」
伸びてきたフワリくんの手が、ツインテールの髪を持って、遊びだす。
「まーた、ヤマにちょっかい、出されそ、」
「、…」
髪の毛を触るその手が、本当はあずりん先輩を求めていること。
伝わるから、泣きそう……
もし……私と同じくらいの気持ちで、フワリくんも恋をしているなら。
絶対にもう、この恋は無理……
「ななちゃん。」
私の恋は、絶望的だ……
「あの、さ、」
「、…」
「……。」
少しの間を置いて、フワリくんの手が、髪から離れた。
がんばって顔を上げたら、少し、眉を下げるフワリくんがいた。
「ごめん、嫌、だった、ね。」
「え、?」
「ごめん、……も、触んないから、……んな顔、しないで、……」
「…、」
違う。
違うのに……
触られるのが嫌なんじゃない。
違うのに……
私はただ……フワリくんが、あずりん先輩を好きなのが、
「今日もポカリ、飲んだほーが、いいよ。」
「、…」
「あちぃから、」
私の好きな人は、とっても優しく笑う。
誰かを大切に想える人だから、こんなにも優しい笑顔なんだって。
そう思ったら、胸が、潰れそうになる……
『全校生徒のみなさんはグラウンドに集合してください』
流れた放送を聞いて、みんな、足は自然と動く。
だけどフワリくんは……今日は隣を歩いてくれない。
1人でフラフラと、なにかを考えるように歩いていった。
考えるなにかの中に、ほんの少しでも私がいたら希望も持てるのに。
でもきっと、現実は……
なにをどう考えたって、あずりん先輩のことだけ、だから。