ふんわり王子と甘い恋♡



「似合うね、これ、」



伸びてきたフワリくんの手が、ツインテールの髪を持って、遊びだす。



「まーた、ヤマにちょっかい、出されそ、」

「、…」



髪の毛を触るその手が、本当はあずりん先輩を求めていること。


伝わるから、泣きそう……


もし……私と同じくらいの気持ちで、フワリくんも恋をしているなら。


絶対にもう、この恋は無理……




「ななちゃん。」




私の恋は、絶望的だ……




「あの、さ、」

「、…」

「……。」



少しの間を置いて、フワリくんの手が、髪から離れた。


がんばって顔を上げたら、少し、眉を下げるフワリくんがいた。



「ごめん、嫌、だった、ね。」

「え、?」

「ごめん、……も、触んないから、……んな顔、しないで、……」

「…、」



違う。


違うのに……


触られるのが嫌なんじゃない。


違うのに……



私はただ……フワリくんが、あずりん先輩を好きなのが、



「今日もポカリ、飲んだほーが、いいよ。」

「、…」

「あちぃから、」



私の好きな人は、とっても優しく笑う。


誰かを大切に想える人だから、こんなにも優しい笑顔なんだって。


そう思ったら、胸が、潰れそうになる……



『全校生徒のみなさんはグラウンドに集合してください』



流れた放送を聞いて、みんな、足は自然と動く。


だけどフワリくんは……今日は隣を歩いてくれない。


1人でフラフラと、なにかを考えるように歩いていった。


考えるなにかの中に、ほんの少しでも私がいたら希望も持てるのに。


でもきっと、現実は……


なにをどう考えたって、あずりん先輩のことだけ、だから。


< 316 / 638 >

この作品をシェア

pagetop