ふんわり王子と甘い恋♡
「ミサンガ、願い叶えてくんなかったねー」
ぼやいたあずりん先輩の手首には、まだミサンガがついている。
あずりん先輩だけじゃない、スー先輩もヨッコも。
気になって後ろに振り向いたら、男子の先輩たちもみんな、つけたまま。
体育祭が終わっても、同じチームのまま。
そんな気がして、なんだか少し……嬉しい。
「いつかさー」
あずりん先輩が、スー先輩の前のイスに座って写真を眺めながら呟いた。
「いつかみーんな大人になって、子供とかできて、旦那とか嫁の愚痴言う頃さぁ」
「あはは、なに、急に」
あずりん先輩の発言に、みんなが笑う。
「そんくらい大人になったとき、この写真見て思い出すんだろうなーって。現実から逃げたくなったときとか、ちょっと老けたなー、昔はどんなだっけなーって思うときとか。見るじゃん、きっと、この写真」
「うん、だね」
「写真見て、きっと戻りたいって思うんだよ。だって現実から逃げたいときに見るんだもん。このときに戻りたいなーって、思うよ。でもさ、この写真見て、いいなぁ、楽しそうだなぁって、そう思えるような今を過ごしてる私たちって、相当幸せなんだよね」
「、…」
「今うちらって、そんな幸せの中にいるんだよ。言ってやりたいよね、未来の、現実から逃げてる自分に。お前はこんな青春送れて幸せ者なんだから、負けんじゃねぇ!って」
「つーか未来の自分、現実から逃げてるのは決定なんだ?」
「あはは、確かに」