ふんわり王子と甘い恋♡
フワリくんのほうはもう見ない。
もう見られない。
声も……ダメ。
だって、全部思っちゃう。
その目で愛原さんを見て、その声でさっちゃんって呼んで……その手で、愛原さんに触れるんだって……
全部全部、……思っちゃう。
段ボールを全ての窓に貼り終わって、試しに電気を消してみる。
暗い中で所々漏れる光を更に遮断して、本当の真っ暗を作り上げる。
段ボールの上から黒い布を垂らしたら、究極の暗闇が完成した。
「おー、いいねいいね、真っ暗でなんも見えない」
「うわー……これぜってぇ怖ぇ……」
視界は真っ暗。
目の前も……上も下も、なにも見えない。
このまま……真っ暗なままだったら、フワリくんと愛原さんを、もう二度と見なくてすむのに。
そしたらもうきっと、こんなに苦しい想いもしなくてすむ。
なんにも見えない暗闇で、私は1人、そんな現実離れしたことを思った。
「電気点けまーす」
パチッと点いた灯りに、目が眩む。
「、まぶし、……」
窓が隠された教室内は、外の様子がなにもわからない。
空は確か曇りだったけど、見えない今となってはあんまり自信もない。