ふんわり王子と甘い恋♡



「お待たせー」



教室にテレビを持ってきたのは、山本先輩とフワリくん。


見ないように、顔を伏せた。



「ついでだったから、心霊写真のDVD何本か借りて来た。どれ流すか見てみようぜー」

「おー、山本先輩気が利く」



フワリくんのほうは見たくない……から。


床にばら撒く真っ赤な紙を、引き千切る仕事を始めた。


ビリビリに破った紙を、大きな袋に入れていく。


簡単な作業だけど、量が量だけに結構手が痛くなる。


その間、男子たちはテレビのセッティングに夢中。


無事ついたってわかったのは、見えたからじゃなくて、背を向けている私にも音が聞こえてきたから。



「高橋ー、DVD見るから来てー」

「……」



それは……怖いDVD、でしょ?


私も見なくちゃいけない、の?


断りたいけど、でも名指しで言われると……断り辛い。


仕方なく、みんなのほうに歩いて……フワリくんから遠い場所に座った。



「電気消すよー」



パチンって消えた電気の後、教室は真っ暗になった。


窓もドアも遮断されている部屋だから、光は一筋も見えない。


この真っ暗な部屋の中、心霊写真のDVDを見る自分が心底かわいそう。


だってやっぱり断ればよかったって、後悔したのは始まってたったの1分後。


怖いナレーションの声と共に、映し出される写真たち。


目を伏せたくなるくらい、……怖い。


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