ふんわり王子と甘い恋♡
「3年の雑用係誰だろうねぇ」
「怖くない人だといいね」
そんなことを話しながら、ヨッコと2人、鞄を持って玄関へ向かう。
「……ていうか、なな、どうしよう」
「ん?なにが?」
俯きがちに話すヨッコの顔が、なんだか少し変。
変っていうか……うん、変。
「……かっこよかった」
かっこ…?
「えっ、もしかしてフワリ、」
「違う、フワリくんどーでもいい!」
どうでもいいって。
いや、どうでもあったら困るから、いいんだけどね。
「じゃあ…?」
「き、…くち、」
「き、!?」
「……先輩」
「あ、先輩のほうか」
てっきり同じクラスの菊地弟かと思った。
「最悪~とか言いながら、すごいみんなをまとめて、た…」
「うんうん、確かに」
「…かっこ、よくない?」
私には断然、フワリくんの方がかっこよく見えるけど。
「フワリくんの、ほうが…」
「いや、菊地先輩のが…」
「……。」
「……。」
恋は盲目。
一度目に入ったら、もうその人しか見えなくなる。
ヨッコの恋が始まった今日、
ヨッコの目に映る菊地先輩が輝きだした。
「あ……」
「ん?」
オレンジ色の夕陽が廊下を照らして影が出来る。
影が伸びる窓の向こう。
1週間前、黒いパーカーを着たフワリくんがこちらを向いたその場所を、
正門に向かって女子生徒と2人で歩く、
フワリくんがいた……