ふんわり王子と甘い恋♡



怖い。


昨日の暗闇とは違う意味で……怖い。




「ななちゃん、」

「、…」



目は……やっぱり合わせられない。


体が……小刻みに震える。



なにを言われるのか、見当もつかなくて。


何も言えなくて、言葉が出なくて……フワリくんの言葉を、ただ待つだけ。



「これ、ななちゃんに渡しといてって、」

「、…」

「さっき、美術室行くとき、瞬くんに会って頼まれた、」



目の前に差し出されたのは……チョコレートパン。



「『チャーハンのお礼』、だって、」

「あ、…」



チャーハンのお礼のチョコパンは……前に、フワリくんに半分もらったのと同じやつ。


受け取ったら、フワリくんの手がスッと離れた。



「、アリガトウ、……ゴザイマス、」

「瞬くんに、言って、」



困ったように笑ったあと、フワリくんの足が……私の横を通り過ぎる。


なにも……ない。


やっぱりなにもなかった。


今はただ、春田先輩に頼まれたから、声を掛けてくれただけ。


捜してたなんて……あるはずなかった。



「、、…」



なにも……されてないのに。


勝手にグサって、胸になにかが突き刺さる。


こんなことで刺さるなら、もう……声もかけないでくださいって言わなきゃダメかも。


だってフワリくんは……今、優しいことをしてくれたわけじゃない。


それなのに……ツライ。



フワリくんの声に……



表情に……



仕草に……



私の全部が、ツライ。



おかしいよ、こんなの。



終われないよ、こんなんじゃ……


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