ふんわり王子と甘い恋♡



目の前を歩くフワリくんの背中が……どんどん、進んでく。


隣を歩いてくれない背中が、……なにも言わずに進んでく。



「、、…」



苦しくて……悲しくて切なくて。


酸欠でフラフラする体は壁に手を添えたまま、その場にしゃがみ込んだ。



しゃがみ込んだら、涙が滲んだ。


頭がぎゅーっと締め付けられて、目の前が揺れる。


酸欠なのか、貧血なのか、緊張のしすぎなのか。


それとも今日、朝ご飯を抜いてきたから?


それとも、暗闇に焚かれるスモークが、体に合わないだけ?



わかんないけど、頭が揺れる……


視界が……回る、……





「、ななちゃん?」




前を歩くフワリくんが、気付いたのか私を呼んだ。



「どした、?」

「、…」

「具合、悪い?」

「、…」



俯く視界の中に、目の前にしゃがみ込んでくれたフワリくんの靴が見える。


こんなに目の前にいるのに……どうして届かないんだろう。


どうしてダメなんだろう。


どうして愛原さん、なんだろう。


私のほうが、いっぱいいっぱい、好きなのに……


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