ふんわり王子と甘い恋♡
21「甘くて苦い」
自販機でコーヒー牛乳を買ってもらって、学食の窓際の席にスー先輩と座った。
いつもフワリくんが飲んでいたコーヒー牛乳が、私の手の中にある。
それを見るだけで悲しくて……視界が滲んだ。
「……飲まない?」
「、…」
いつまでもストローを刺さない私を、スー先輩が心配そうに見つめる。
「イタダキ、……マス、」
ストローを咥えたら、甘くて苦い、そんな味。
だけどこんな状況になって、初めて気づいたことがある。
フワリくんがコーヒー牛乳を飲んでいるところを、最近は全然見ていない。
体育祭の頃は、よく飲んでた気がするけど。
好物じゃなくて、ただブームだっただけなのかもって。
それでも私にとっては、甘くて苦い思い出の味ってことに、変わりはない。
「あれ、2人だけなの珍しくね?」
「、…」
現れた春田先輩の姿に、思わず顔を伏せた。
だって、フワリくんの幼馴染。
それを知っただけで、春田先輩のなにかが私の中で変わる。
思ってたよりも、ずっとフワリくんの近くにいる人。
フワリくんの色んなことを知っている人。
今は……そんな人と面と向かってなんて、話せない。
それでもどうにか顔を上げたら、……じっと私を見る、春田先輩がいた。
きっとまた……聞かれる。
「今日も一緒じゃないんだ?」
「、…」
「大ちゃんと」
ほら、……聞かれた。