もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
「どうした?」
「アイスが溶けて、ワンピースに垂れちゃいました……」
せっかく楓さんに買ってもらったワンピースなのに、話している間に溶けたアイスキャンディーが垂れて裾の辺りに染みが出来てしまった。
「服くらいまた何着でも買ってやる。それより早く食べないと溶けるんじゃないか」
「そ、そうですね」
私が溶けかかったアイスキャンディーを咥えるが、薄桃色のアイスキャンディーは溶けて、アイスキャンディー の棒を持つ手にも垂れていた。
すると、楓さんは私の手首を掴むと、自分の身体に軽く引き寄せた。
顔を近づけると、手に垂れていたアイスキャンディーを舐めたのだった。
「……っ! 何をして……!」
「話したら喉が渇いた。それに俺もピンクライム味を食べた事が無いんだ」
「それなら、飲み物を買って来ればいいじゃないですか!? 何も手を舐めなくたって……!」
「嫌か?」
「えっ……?」
「俺に手を舐められるのは嫌か?」
眼鏡越しでも伝わってくる熱を帯びた楓さんの綺麗な瞳。真っ直ぐに見つめてくる眼差しにたじたじになってしまう。私は「いえ」と答えるのが精一杯だった。
「でも、汚いかもしれませんし。衛生上は良くないかと……」
「小春の手はいつだって綺麗だよ。それにさっきウェットティッシュで拭いていただろう」
「拭いてから時間が経っています。それに楓さんの身体に何かあったら、私……」
悲しいです、という言葉はただ口の中で呟くだけに留めて、私は残っていたアイスキャンディーを食べてしまう。
話している間に更に溶けてしまったアイスキャンディーが木の棒から垂れて口の周りを濡らす。
「食べづらそうだな」
「すっかり溶けてしまいました。今日は温かいから……」
ようやく食べ終えて、アイスキャンディーが刺さっていた木の棒だけが残る。
口の周りも汚れてしまったのでハンカチで拭こうとカバンから取り出した時、楓さんは顔を近づけて来たかと思うと、唇の端に小さく舌を這わせて、そのまま軽く口付けてきたのだった。
「ああっ! な、何をするんですか!?」
「手は嫌そうだったから、唇にしてみた。ここならいいだろう」
天然なのか、何とも思っていないのか、人差し指で私の唇の下を軽く撫でると、そのまま自らの舌を這わせる。
「こんな事をして、これまで女性から何とも言われなかったんですか?」
「小春以外の女性と付き合った事ないからな」
「今まで彼女とか作った事ないんですか!?」
つい声が大きくなってしまった。近くにいた現地人や観光客達から注目を集めたが、何でもないと分かると、すぐに各々の世界に戻っていった。
楓さんの様なイケメンなら、きっと女性は放っておかない。
連日の様に告白されて、バレンタインデーにはチョコレートを沢山貰っていただろうと思っていた。その中の美人な女性とお付き合いして、もしかしたら、その美人な女性は幼馴染みのジェニファーかもしれない――。
そう思って聞いたが、楓さんは首を振っただけだった。
「アイスが溶けて、ワンピースに垂れちゃいました……」
せっかく楓さんに買ってもらったワンピースなのに、話している間に溶けたアイスキャンディーが垂れて裾の辺りに染みが出来てしまった。
「服くらいまた何着でも買ってやる。それより早く食べないと溶けるんじゃないか」
「そ、そうですね」
私が溶けかかったアイスキャンディーを咥えるが、薄桃色のアイスキャンディーは溶けて、アイスキャンディー の棒を持つ手にも垂れていた。
すると、楓さんは私の手首を掴むと、自分の身体に軽く引き寄せた。
顔を近づけると、手に垂れていたアイスキャンディーを舐めたのだった。
「……っ! 何をして……!」
「話したら喉が渇いた。それに俺もピンクライム味を食べた事が無いんだ」
「それなら、飲み物を買って来ればいいじゃないですか!? 何も手を舐めなくたって……!」
「嫌か?」
「えっ……?」
「俺に手を舐められるのは嫌か?」
眼鏡越しでも伝わってくる熱を帯びた楓さんの綺麗な瞳。真っ直ぐに見つめてくる眼差しにたじたじになってしまう。私は「いえ」と答えるのが精一杯だった。
「でも、汚いかもしれませんし。衛生上は良くないかと……」
「小春の手はいつだって綺麗だよ。それにさっきウェットティッシュで拭いていただろう」
「拭いてから時間が経っています。それに楓さんの身体に何かあったら、私……」
悲しいです、という言葉はただ口の中で呟くだけに留めて、私は残っていたアイスキャンディーを食べてしまう。
話している間に更に溶けてしまったアイスキャンディーが木の棒から垂れて口の周りを濡らす。
「食べづらそうだな」
「すっかり溶けてしまいました。今日は温かいから……」
ようやく食べ終えて、アイスキャンディーが刺さっていた木の棒だけが残る。
口の周りも汚れてしまったのでハンカチで拭こうとカバンから取り出した時、楓さんは顔を近づけて来たかと思うと、唇の端に小さく舌を這わせて、そのまま軽く口付けてきたのだった。
「ああっ! な、何をするんですか!?」
「手は嫌そうだったから、唇にしてみた。ここならいいだろう」
天然なのか、何とも思っていないのか、人差し指で私の唇の下を軽く撫でると、そのまま自らの舌を這わせる。
「こんな事をして、これまで女性から何とも言われなかったんですか?」
「小春以外の女性と付き合った事ないからな」
「今まで彼女とか作った事ないんですか!?」
つい声が大きくなってしまった。近くにいた現地人や観光客達から注目を集めたが、何でもないと分かると、すぐに各々の世界に戻っていった。
楓さんの様なイケメンなら、きっと女性は放っておかない。
連日の様に告白されて、バレンタインデーにはチョコレートを沢山貰っていただろうと思っていた。その中の美人な女性とお付き合いして、もしかしたら、その美人な女性は幼馴染みのジェニファーかもしれない――。
そう思って聞いたが、楓さんは首を振っただけだった。