白の悪魔と黒の天使
人を寄せ付けない黒瀬が助けてくれた事に驚きつつ、渡された缶に視線を落とす。

「…ミルクティー」

これを黒瀬が飲むのだろうか?

そう思うと、自然と顔が緩んだ。
だって、絶対ブラックコーヒーとかしか飲まなそうな感じだったから。

ほとんど接点のなかった黒瀬が、とても近くに感じて嬉しくなって、麗華は缶を抱きしめたまま、秘書室に戻った。

それからの麗華は、貰った飲み物を飲めないまま、慌ただしく仕事をする。

落ち着いたのは、午後9時を過ぎた頃。

西園寺社長を見送ると、ようやく自分も片付けをし、鞄を持とうとした。

「…あ、せっかく頂いたのに、飲む時間もなかったな」

そう呟くと、それを開け、やっと口にした。

甘さが口の中に広がる。

なんだか、疲れが取れていくよう。

ホッとして。ふと黒瀬を思う。

見た目で人を判断してはいけないなと。とても優しい人なんだと思った。
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