フヘンテキロマネスク
「真咲は、俺が送るの迷惑?」
「……迷惑とかじゃないけど、遠回りになるでしょ」
「いいよ、そんくらい。俺がただ少しでも長く真咲といたいだけだから」
そういう言い方はずるい。今まで以上に気持ちが伝わってきてしまうから。
「ごめんね、わがままで」
むしろ謝るのは私のほうで、鈴本くんはなにも悪いところなんてない。わかっているのに、結局何も言えないままで。
薄暗い路地を抜ければ、夕暮れ時だったみたいで、通りがオレンジ色に包まれていた。
見上げた空は綺麗な茜色で、いつかの帰り道を思い出す。
私のロック画面はいまだにあのとき撮った空のままだ。
「……そういえば、真咲のロック画面って今もあの空?」
ちょうど考えていたところでそんな質問をされて、思わず驚いてしまった。
鈴本くんもこの空を見てあのときのことを思い出したのかな。
同じものを見て同じことを考えるなんて、まるで通じあってるみたい。そんなんじゃないのに。