フヘンテキロマネスク
「あ、待って。今からは用事あるから無理」
「…………」
「ごめんって!……明日!明日なら大丈夫だから!まさちゃんがこの前インスタ載せてたとこ行きたい!!」
「.......うん、じゃあ明日ね」
用事があるなら仕方ないか、と明日の約束をして、申し訳なさそうに手を振る日菜を見送った。
そろそろ私も帰らなきゃ。自分の席に戻ると机に置いていた鞄を手に取って歩き出す。教室を一歩出たところで、予想外の人物と目が合ってしまった。
「あ、やっぱりいるんじゃん」
――――咄嗟に走り出してしまったのは、反射のようなものだった。
「はい、掴まえた」
まあ逃げられるはずもなかったんだけど。駆け出した瞬間腕を掴まれてしまった。だって足の長さに差がありすぎる。