フヘンテキロマネスク
「……鈴本くん、なんでいるの?」
背を向けたままで問いかける。ここ最近避けてたこととか、日菜に嘘を言うように協力してもらってたことに対する罪悪感で、顔を見るのがこわくて振り向けない。
「だって真咲の鞄机の上にあるの見えてたし」
……それは、迂闊だった。でもまさか、席の位置を正確に覚えてるとは思ってなかったから。
「ねえ、なんで避けるの?」
ぎゅ、と私の腕を握る手に力がこもった。だけどやっぱり振り向けない。無言で首を振れば、「俺のこと、嫌い?」と別の質問が投げかけられる。その声に哀愁が孕んでいて、思わず振り向いてしまった。
それが鈴本くんの計算のうちだなんて気づかないで。