フヘンテキロマネスク
だってそれだと保科くんとの思い出を掻き消すだけじゃなくて、鈴本くん自身も一緒に消えて行ってしまう気がしたから。


『くる』ってあだ名をつけてくれたのだって鈴本くんの優しさだったのに、それを本人がなかったことにしてしまうのが寂しい。


だから、


「上書きとか、しなくたってよかったんだよ」


そう、言えば、鈴本くんはなぜか急に泣きそうな顔をした。







――――その瞬間、今まで俺がやってきたことを全て否定されてしまった気がした。



『真咲』って呼ぶ自分の声が、ようやく馴染んできたように思えていたのに、真咲はもしかしたらずっとそうやって呼ばれることを嫌に思ってたんじゃないかって考えると、全身の力が抜けていくような感覚に陥った。

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