フヘンテキロマネスク
「それなのに、鈴本くんがそれをなかったことみたいに掻き消していくのが寂しくて。それに、ロック画面のこととか、保科くんのどこが好きだったのか聞いてきて『そんなの上書きしきれるはずない』とか、そうやって過去を気にして雁字搦めになってるような気がしたから。だから、無理に上書きとかしなくてよかったんだよって、そういう意味」
情けなくも、その場に崩れ落ちそうになってしまった。なんとか踏みとどまったけれど。
真咲は俺を見ると、優しく目を細めて、
「鈴本くんは鈴本くんでいいよ」
そう言って笑うから、もう敵うはずなかった。