フヘンテキロマネスク




「――――真咲、好きだよ。誰よりも好きだから、俺と付き合ってほしい」



改札の前、行き交う人々の中で、私たちふたりだけ立ち止まる。


周りの目なんて気にならなかった。



「……私ね、付き合ったらいつか終わってしまうんじゃないかってこわくなるの」



ずっと言えなかったくせして、今はどうしてかすんなりと自分の心が溢れていくようだった。


……いまもまだこわさはある。もうその手を掴んでしまったら手放したくなくなって、自分が自分じゃないみたいになってしまうかもしれない。終わりがくることを恐れて、鈴本くんの声も聞こえなくなって信用出来なくなるかもしれない。


でも、



「……俺も、幸せの後を考えるとこわくなるけど、でも終わりがくること怖がってたら、何もできないよ。そもそも、生まれた時点で終わりが決まってるのに俺も真咲もこうやって今を悩みながら生きてるんだから、俺たちはもう十分それだけでつよいよ、きっと。だから大丈夫」



そうやって言ってくれる鈴本くんとなら、不明確な未来の中に飛び込んでもいいかも、って。そう、思ってしまう。
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