フヘンテキロマネスク


「……あ、」



他愛もない話をしながら昇降口まで差し掛かったとき、見覚えのある背中が視界の端に映った。相手も私を認識したようで、はっきりと目が合う。



目が合ったその人、保科くんは、私と鈴本くんふたりを見ると、さりげなく口角を上げて笑う。



「……ふたりとも、お似合いじゃん」



その言葉を聞いて、やっぱり私はこの人を好きになって改めてよかったなって思うんだ。もう感情は変わってしまったけれど。



「遥輝が後悔する暇もないくらい、幸せにするから黙って見ててよ」



鈴本くんはそう言って挑発的に笑って、私の腕を掴むんじゃなくてしっかりと指と指を絡めて握ると、そのまま歩き出す。



「……もう後悔はとっくにしたよ」



すれ違いざま、そんな言葉が聞こえて、ついこの前のことを思い出した。

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