フヘンテキロマネスク
――――確か3日前のことだ。
鈴本くんと付き合ってすぐにその噂は広まってしまって、当然それは保科くんの耳にも入って。
そしてなんというタイミングなのか、ちょうどその直後に調理実習の班で一緒になって、そこですこしだけ話す時間があった。
「ごめんね」
第一声は、そんな脈絡もない言葉。
「……なにが?」
「俺、本当は気づいてたよ。真咲がどこかで一線を引いてたこと」
それはきっと、私が鈴本くんに嫌われてしまうのを恐るあまりに、醜い感情はすべて心の奥にしまっていたからだ。
「本当は俺が踏み込むべきだったんだろうけど、俺も弱かったんだと思う。だから気疲れしてしまって、他の人に気移りしてしまった。そんなの、別れてから一時的な感情だって気付かされたけど」
「……そっか、」
「って、今更こんなん言われても困るよな。でも真咲の幸せはちゃんと祈ってる。渚なら大丈夫だよ、ぜんぶ受け止めてくれると思う」
そう言うと、保科くんは「あ、俺他のとこ手伝ってくる」と私に背中を向けた。