フヘンテキロマネスク


真咲の答えを待つようにじっと覗き込む。すると真咲は花がほころぶような笑みを零してふるふると首を振った。



「嫌どころか、余裕のないところもっと見せてほしいって思ったから、私重症かも」



そうやって、想定以上のダメージを俺にくらわせるんだから、きっと俺は一生真咲に適わない。



「……やっぱり、俺もう全部運使い果たしてるな」



日々溢れてくる際限のない幸せに、溺れてしまってもう抜け出せなくて。この幸せを知ってしまったから、もう手放すことなんかできそうもない。



つい零れてしまったひとりごとに、「なにそれ?」と首を傾げて俺を見るきゅるきゅるとした瞳ですら、愛おしくて。脳はもうとっくに、痺れている。



「いや。ただ、幸せを噛み締めてただけだよ」



もしも、もうすべて運を使い果たしてしまっていたとしても。


この先もずっと真咲が隣にいるのなら、もうそれだけで絶対的に幸福だ。

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