フヘンテキロマネスク
「俺は真咲のわがままも愛せる自信があるから、だからこわがらないでこれからは素直に言って。俺もちゃんと伝えていくから」
長年染み付いてた強がりの癖は簡単には治せないかもしれないけど、でも少しずつ、変わっていけたらいい。
きっと、渚が隣にいるのならもう大丈夫。
「……じゃあ、今思ってること言うね、―――すきだよ」
言った直後に恥ずかしくなって、その場に蹲りたくなる。でもすぐさま抱きしめられたせいで、蹲ることはできなかった。
「うん。俺もすき。すっごいすき。めちゃくちゃだいすき」
隙間もないくらいに抱きしめられて、耳元で囁かれる。もう想いはとっくに溢れ出していて、今いるところが冬の通学路の端っこだってことも忘れて、腕を背中に回した。
温度も香りも、移って、移されていく。
強まるバニラの匂いに、さっきまではかじかんでいた心が一気に温まっていくのを感じた。