フヘンテキロマネスク
思う存分
「ねぇ待ってリフトってこんな揺れるの?ほんとに大丈夫これ?」
「私も初めてだからわかんないけど、こういうものじゃない?……あ、見て。手袋に付いてた雪、綺麗な正六角形」
「……まさちゃんって意外とのんきだよね」
どこを見ても真っ白な景色の中でリフトに揺られること数分。
隣に座る日菜は「なんで修学旅行がスキーなの…」と悲愴に満ちた声でブツブツ呟いている。私も日菜ほどではないけれど、正直同じようなことを少し前まで考えていた。
だって修学旅行といえば高校生活において一番の行事といっても過言ではないはずで、それがスキーだけで埋め尽くされるのはすこし物足りなさを感じてしまう。
どうせなら、観光地とかテーマパークの方がよかったんだけどなあ。
そんなことを、たった数日前まで考えていた。
だけど、それをこの前の帰り道に話したとき、渚が「観光地とかテーマパークはまたふたりで行けばいいし、こんな機会じゃなきゃ行かなかったかもって思ったら、楽しまないと損じゃない?」と言っただけで、私は単純だから一気に沈んでいた気持ちが浮上した。
春休みになったらふたりで遠出しようね、と話したことも思い出して、自然と頬が緩みそうになる。