フヘンテキロマネスク

「じゃあ私、料理上手くなるようにがんばるね」

「俺もがんばるよ。せっかくだし今日の夜ご飯はふたりで作ろうね」

「それ絶対時間かかるやつだよ」

「ちょっと、人が足引っ張るみたいな言い方やめて?」

「ふふ、ごめんごめん。だって渚慎重すぎるから」

「慎重なのはいいことじゃん。とりあえず今から買い出しでも行く?そんでご飯作って食べたあと、めいっぱいくっついてようよ」



さっきの言葉も忘れていなかったらしい渚の言葉に、すこし恥ずかしくなりながらも「うん」と頷いて立ち上がった。エンドロールがすっかり終わって最初の選択画面に戻ってしまったテレビを消そうとして、さっきまで考えていたことをふいに思い出す。


やっぱり、私は高校時代に戻れなくていいや。


確かにあの頃が眩しく思えてしまうときもあるけど、でも今は高校生の頃には知らなかった渚のことをたくさん知ってるから。


プツリとテレビの電源を落とせば、「行こっか」と渚が私の手を握る。それに握り返しながら、ふたりで部屋を出て鍵をかけた。「1年半後には鍵も同じになるんだね」なんて話しながら。
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