フヘンテキロマネスク
そう思っていることが顔に出ていたのか、渚は「俺がつくるから安心して」と誇らしげに笑った。
「じゃあ任せるけど、本当にできる?」
「できるよさすがに。材料入れるだけだしね」
「え、それだけでできるの?」
「そうだよ。知らなかったの?」
「てっきり生地を自分で捏ねてから機械の中に入れて、焼けるのを待つのかと思ってた」
「そんな面倒くさかったら売れないでしょ」
まあ確かにそれはそうか。材料を入れるだけならいいかも。でも渚がせっかくやる気になっているので、ぜんぶ任せることにした。
「真咲〜!起きて〜!」
翌朝、ぐっすり熟睡していたところを、体を揺すられて起こされた。なかなか開かない目をこじ開けると、私の顔を覗き込んでいた渚と目が合って、「おはよ」とにっこり微笑まれる。