フヘンテキロマネスク


.......そんな風に言われると、何も責められないじゃん。だって食パンが上手くできて嬉しいからって起こしちゃうの、なんだか親に褒めてもらいたい子供みたいで可愛いって思っちゃったんだもん。まあ親子なんかじゃなくて恋人だけど。


そんな褒められたがりな恋人さんのために、「早く起きた分休みも長く感じるからいいよ。それより早く食べたいな」と、まだ残る眠気には知らないふりをした。


リビングに入ると、麦のいい香りがした。


さっそく渚が食パンを切りはじめたので、私はコーヒーを入れることにする。渚はブラック、私は角砂糖をひとつだけ入れるのがお決まり。


「すごいね、ほんとに出来てる」

「でしょー?あとね、実はあわせてジャムも買っといた」

「いいね。.......って待って。どんだけ買ってるの?」



切り終えた食パンを皿に乗せて並べ、その横に渚がジャムの瓶を次々と置いていく。マーマレード、ピーナッツバター、きなこ、梅、ブルーベリー、あまおう、とちおとめ、ハニーミルク。


.......いくらなんでも多過ぎる。

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