フヘンテキロマネスク
「真咲いちご好きだから、あまおうととちおとめどっちも買ってみたよ」
「.......ありがとう。ところでそれ、ぜんぶ開けるの?」
「うん。せっかくだしさ、いろいろ味くらべしてみようよ。たまにはこういうのもアリでしょ」
「確かにいいかも。糖分過多な朝になっちゃいそうだね」
こんなに一気に開封して大丈夫かな、とか思ったけど、いろんな味を一気に味わえて、しかもそれを渚と共有できるのはいいなって思った。
「まあそのまえに、とりあえず最初はそのまま食べてみて」
勧められるがまま、まずはひとくち。まだあたたかいパンをちぎって食べた。自然なやさしい甘みが口内に広がって、幸せな気分になる。
「おいしい!」
「ほんと?よかった。俺料理できないから、せめて朝は真咲が楽できるようにと思って。買ってよかったなぁ」
「そんなこと考えてくれてたの!?」
「いつも眠そうな顔しながら作ってくれるから、申し訳ないなって。あと単純に真咲がいつか怪我しそうでこわい」
確かに私は朝が弱いから、前に朝ごはんを作ってる時にぼーっとして火傷しそうになったことがある。後ろから見てた渚が阻止してくれたおかげで無事だったけど。
渚がいきなりホームベーカリーを買ってきたときは、またよくわからないものを買ってきて.......と思ったものの、まさか私のためだったなんて。ひそかにまた好きが積もった。