フヘンテキロマネスク
ガタンゴトン、ガタンゴトン、電車の振動に揺られながら目を伏せる。握りしめたカバンに昨日までぶら下がっていたお揃いのキーホルダーはもうない。
元通り、何も無い状態に戻っただけ。
だから私も元通りに戻らないと。
保科くんと出会うまで普通に生きてこられたんだから、戻ったって何も問題はないはずだよ。
自分に言い聞かせるように、心の中で何度も同じことを呟いていた。
いっそ、保科くんを嫌いになれたなら楽なのに。
そんなことを考えて、また自分が嫌になった。