フヘンテキロマネスク
「……はあ、」
思わず溜息が漏れてしまうのも仕方ないことだと思う。
いつもなら私と保科くんは一緒に登校するし、教室内でもよく話していた。
けれど登校は別で、不自然なくらいに話もしない目も合わさない私と保科くんの様子に、何人かの女子が察してしまったらしく、気づけば噂されていて。
しかも勝手に別れの原因まで邪推してる人もいるから余計に嫌になる。私が気にしなければいいだけなのかもしれないけど。
「おつかれ」
2度目の溜息を吐きそうになってしまったところで、日菜が苦笑気味に声をかけてくる。きっと日菜にも聞こえてたんだろう。
「う、ありがとう日菜……」
「私びっくりしたよ。保科ってここまで人気あったんだね」
「……ね。ほんとなんで私なんかと付き合ってくれたのか謎だよ」
本当に私には勿体ないくらいに眩しい人だったのだと再確認させられた。
乾いた笑いを零せば、日菜は私を労わるように優しく頭を撫でてくれて。
「私はなんで保科がまさちゃんを手放しちゃったのか謎だね。保科に代わって私が大事にしてあげる」
茶化すような頼もしい日菜の言葉に救われる。変に気を使われて腫れ物に触るような態度を取られるよりもよっぽど楽だった。