フヘンテキロマネスク
あまりにも突然のことだったから思考は全然働いてくれなくて、ようやく我に返ったのは校舎を出た後だった。
「ちょ、ちょっと待って鈴本くん!」
「なに、どうしたの?」
私の腕を引いていた鈴本くんの手を振りほどけば、鈴本くんはケロッとした顔で私を振り返る。不思議そうな顔をしているけれど、私の反応は間違ってないはずだ。
「どうしたの、って私が聞きたいよ!なんで一緒に帰るの?」
「俺が一緒に帰りたいからだけど」
「.......いや、だからそれがなんで、」
間違ってはいない、はずなのだけれど。
鈴本くんの瞳が真っ直ぐすぎて、いちいち理由なんかを気にしている私の方がおかしいんじゃないかって思えてくる。
去年クラスメイトとして接してきて、鈴本くんは軸がぶれないというか、自分の意思をつよく持ってる人だってわかってるから、なおさらそう思うのかもしれない。
私は自分をつよく持っていないからすぐに気持ちがぶれてしまいそうで、鈴本くんの真っ直ぐな目がすこし、こわい。