フヘンテキロマネスク



「えー、でも俺一応連絡したよ。教室行く前に」



まあそれを見て鈴本くんも当然同じように歩き出して、あっという間に私の隣に並ぶわけだけど。



「えっ、うそ」

「なんなら昨日の夜もLINEしたし」

「……あー、見てなかった。ごめん」



あまりスマホを見たくなくて、ずっとマナーモードのまま放置していたから気づかなかった。

カバンの内ポケットにしまっていたスマホを取り出してみれば、確かに言われたとおり鈴本くんからのLINEが入っている。まあよくわからない変なスタンプなんだけど。


でもきっと、私に気を使ってくれてたんだろうな。普段は全然LINEなんてしないし、確か高一の時に一度だけやり取りした程度だ。


そう、その程度の関わりだったからこそ、今こうして私を気にかけている理由がわからないんだ。だって私に恩売ったところでメリットなんてない。


ぼんやりと考え込みながらロック画面に現れた通知を徐に消していけば、通知に隠されていた群青が広がって、一瞬指が止まった。


今年の5月、保科くんと一緒に見に行ったネモフィラ畑の写真。画面いっぱいに広がる群青色の花の絨毯を見ただけで、保科くんが写ってるわけでもないのに、一気に思い出が蘇ってくる。

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