フヘンテキロマネスク


「……それ、遥輝と行ったの?」



そしてそれに目敏く気づく鈴本くん。疑問符はついてるけど、答えなんてわかっているのだと思う。



「…うん。でも、別れたのに2人で行った場所ロック画面に設定してるなんて未練がましいよね」



通学鞄にぶらさげていたキーホルダーは外したくせに、ロック画面はそのままなんだから自分でも笑ってしまいそうになる。


見栄っ張りな自分に気がついてしまって。



きっと私は、保科くんや周りの人に、既に立ち直っていると示したかったのだと思う。


私しか見ないロック画面はそのままで。
外したキーホルダーは、捨てることなく机の奥にしまっている。


それがもう答えだった。



「そうかな。昨日の今日なんだからまだ吹っ切れてなくてもおかしくはないでしょ。人の感情なんてそんな簡単に変わるものでもないし」



茜色に染まる空を見上げながら、鈴本くんがぼそりと呟く。



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