フヘンテキロマネスク


思考が追いつかないでいるうちに、「こっち見て」という声がして、それにつられるがまま鈴本くんが斜め上に掲げたスマホを見つめれば、カシャ、とシャッター音が響いた。



「え、ちょ、ちょっと鈴本くん?」

「待って、あと10秒」


そう良いながら私のスマホをささっと弄ると、「はい、終わり」とすがすがしく笑って私にスマホを返してくる。


なんの悪びれもない顔に、呆気にとられてしまう。突拍子もないことばかりでついていけない。


なんとなく振り回された気分になりながら戻ってきたスマホを見つめれば、ロック画面が変わっていた。


そこに写っていたのは、涼しげに微笑む鈴本くんと、アホ面の私。



「ちょっとなにこれ!私めっちゃ変な顔してるからだめ!」

「あ。俺とのツーショットなのはいいんだ?」

「そ、それもだめだけどっ、」



本当に鈴本くんの行動って想像もしてないことばっかり。


勝手に人のスマホで撮るのもどうかと思うけど、それだけでは飽き足らず、その写真を無断でロック画面に設定してしまうんだから何を考えているんだか。

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