フヘンテキロマネスク



「もう、ほんとに鈴本くんの考えてることってまったくわかんない。意味不明」



さすがにロック画面をそのままにすることはできなくて、無難に空でも撮ろうとカメラアプリを開いて空に掲げる。

茜色に染まった温かみのある空は、カメラアプリのフィルターを通して見ると、余計にノスタルジックなものに思えた。


画面をタップすればカシャ、と響いて、空が閉じ込められる。



「意味わかんないくらいが丁度良いでしょ?余計なこと考えなくて済むし」



ロック画面を変更しようとしたとき、落ちてきた声に何となしに顔を上げれば、優しく穏やかに笑う鈴本くん。


けれど、その顔はどこか哀愁を孕んでいて、まさに今の空みたいで。


わからなくなる。


鈴本くんの本心が、鈴本くんの感情が。



そうやって、思考を占領されていく。


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