フヘンテキロマネスク
3
『他のこと考える余裕もないくらい、俺のことでいっぱいになってよ』
鈴本くんと一緒に帰ったあの日から1週間とすこし。
ずっと頭の中をその言葉がぐるぐるとループしては、私を悩ませ続けている。
それはきっと、深読みしてしまいたくなる私の悪い癖のせい。
特に深読みせずにストレートに受け止めるか、いっそ何も気にしなければいいのに、何か裏があるんじゃないかって余計に考え込んでしまっている。
「……私、男子の考えてることがわからない、」
ぼそりと、昼休みのざわめきに溶かすように、溜息混じりに小さく呟いた。目の前に座る日菜は突然の私の言葉に、ミニトマトにフォークを刺しながらコテンと首を傾げる。
「え、なにいきなり。どうしたの?」
「この世で物理よりも意味わかんないものがあるとは思ってなかった……」
「いやだからどうしたの。確かに物理は意味わからんけど」
心做しか日菜の声が呆れたものへと変わっていく。最初こそ心配そうにしていたけど、きっと私の反応を見て大したことないと思ったに違いない。
私からしてみれば、わりと本気で悩んでるんだけど。