フヘンテキロマネスク

この一週間、保科くんの話はほとんどしなかった。それはきっと、私がその話をしたくないと日菜が察していたからだと思う。


それなのになぜ今更……?



「保科くん、何かあったの?」



どうせ教室の喧騒の中では響かないことは知っているけど、なんとなく声を抑えた。



「……うーん、何かあったっていうか、もう新しい彼女できたんだって。実際に私は見てないから本当かはわかんないけど、」



ほんの一瞬、喧騒が遠のいたような気がした。




「……そうなんだ。でも他に好きな人ができたって理由でフラれたから、特に驚きはないかな」



……そんなのは嘘だけど。


想像してなかったわけではないのに、実際に聞いてみるとかなりびっくりしてしまった。



だって、早くない?


別れたんだし私がどうこう言えることじゃないんだろうけど、こんなに早いと別れを切り出される結構前から気持ちは離れてたんだなってわかってしまって、胸がちくりと痛んだ。


最後の方は我慢して私と付き合ってたのかな、とか。そんなことを考えてしまうからだめだ。


だから咄嗟に切り替えるように、口角を上げて取り繕う。
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