フヘンテキロマネスク

さすがに私は罰が当たってしまえとは思えないな。


ただ、


「……私は、」



――――私と付き合ってた時以上に、幸せにならないでいてほしい。


そんな考えが脳裏を過って、そんな自分に寒気がした。



「え？なに？」



口を噤んだ私を日菜が不思議そうに覗き込む。その瞳から逃れるように目を逸らして、慌てて首を振って「なんでもない」って笑った。



だってこんな醜い感情、言えるはずない。


ゾッとしてしまったんだ、自分の思考に。


口先では幸せを願っときながら、実の所はまったくそんなこと考えてない自分がおぞましくて。


もう過去に成り下がったくせにいつまでも一番でいたがる自分が、自分のことだけど理解できなかった。


私は自分で思っている以上に、酷く傲慢で自分勝手な人間なのかもしれない。それとも、恋心がそうさせているのだろうか。