フヘンテキロマネスク
かといって、それを確かめたことに意味があるのかはわからないけれど。


ただ、どうしても今の私には鈴本くんとの関係が腑に落ちなかった。付き合ってるわけでもないのに、こうして時間を多く共有することに疑問を抱いてしまっている。

それは私の頭が固いからなのかな。



「この際鈴本くんと付き合っちゃえば?」

「……いや、でも実際言われたわけじゃないし。それに私、しばらく恋愛する気にはならないな」



気持ちがまだ切り替えられていないということもあるけれど、今の私はまた誰かを好きになることに漠然とした不安を抱いてしまっている。



「まあ、まさちゃんがそう言うなら私はそれでいいと思うけどさー、」



ちょうど、キーンコーンカーンコーンと予鈴のチャイムが鳴り響いて、日菜の言葉が掻き消される。


でもなんとなく、ところどころ聞こえたワードに言いたいことは想像ついた。


多分、恋愛する気ないなら鈴本くんに期待させてしまわないうちにはっきり言っといた方がいいよ、とかそんなこと。


自分の席に戻りながら、ぼんやりと考え込む。


とりあえず今度会った時にそれとなく話してみようかな。


まあこれで私の勘違いだったとしたら、とんだ自意識過剰な人間だと見なされて恥ずかしい目に合うんだろうけど、それでもこうやってうじうじし続けるよりかはましな気がする。
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