フヘンテキロマネスク
そう密かに心の中で決めたその日の放課後、早くもそのタイミングは訪れた。





「真咲、今日も予定ないでしょ?」



一昨日ぶりに「一緒に帰ろ」と私の教室に顔を出した鈴本くん。クラスメイトも最初こそ驚いていたけれど、今ではもう慣れたのか大袈裟な視線が刺さることはない。



「……予定ないって断定するの結構失礼じゃない?予定あるかもしれないじゃん」

「えー。でも予定あったら困るよ、俺」

「そう言われる私の方が困る」


そう言って呆れながらも、素直に鞄を手に持って鈴本くんのところまで行くんだから、大概私は流されやすい性格なのだと思う。


教室のドアにもたれ掛かっていた鈴本くんの目の前までたどり着けば、鈴本くんは私を見て小首を傾げる。



「なんか真咲荷物多くない?」



その視線の先は、見た目からして教科書がぎっしり詰まってることがわかる私の鞄。
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