フヘンテキロマネスク
……ますます、わからなくなる。



「なんでそれをわざわざ教えてくれるの」



鈴本くんは、まだ私が保科くんを吹っ切れていないことに気がついているはずで。

そして、そんな未練たらたらな私を励ましてくれたり、上書きすることで忘れさせようとしてくれていた。


それなのにどうして、まだ期待があるようなことを仄めかすのかわからない。


鈴本くんはもしかしなくとも私のこと好きなんじゃないか、なんて思ってしまっていたけれど、でもそれは自惚れのような気がしてくる。

だって、もし本当に鈴本くんが私のこと好きだったら、わざわざ保科くんのこと教えるはずがない。



「真咲がそんな顔してるからだよ」



鈴本くんはそれだけ言うと、私から目を逸らして静かに歩き出す。



「…そんな顔って、」

「まだ遥輝のこと忘れられませんって顔」


鈴本くんについて行くように歩きながら無意識に顔をおさえた。自分ではまったく顔に出してないつもりだったから、そんなにわかりやすい顔をしていたのかと思うと少しショックだ。
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