フヘンテキロマネスク
「ねぇ、真咲って遥輝のどこを好きになったの」
斜め前を歩く鈴本くんが振り返ることもなく問いかけてくる。鈴本くんが見つめているであろう方向には、小さくなった保科くんの背中。
すぐに言葉を返すことはできずに、下を向いて黙り込む。
どうせ思い出したって切なくなるだけで、できれば考えたくない。それなのに、自然と、いまもまだ私の中で生き続けているみたいに新鮮に蘇ってくる。
「どこって……あ、でも今思えば、きっかけは鈴本くんだった」
「……おれ?」
「うん。保科くんが鈴本くんに教科書借りにきたとき」
1年のとき、私と鈴本くんが同じクラスで、保科くんは別クラスだった。保科くんの存在自体は知っていたけれど、接点もなかった私たちは話したこともなくて。
そんな私たちが知り合ったきっかけは、教科書を忘れた保科くんが鈴本くんに借りにクラスにきたこと。
ちょうどその少し前に鈴本くんは他の友達に既に教科書を貸した後だったから、たまたまそのすぐそばを通りがかった私が鈴本くんに声をかけられて保科くんに貸すことになったのだった。
斜め前を歩く鈴本くんが振り返ることもなく問いかけてくる。鈴本くんが見つめているであろう方向には、小さくなった保科くんの背中。
すぐに言葉を返すことはできずに、下を向いて黙り込む。
どうせ思い出したって切なくなるだけで、できれば考えたくない。それなのに、自然と、いまもまだ私の中で生き続けているみたいに新鮮に蘇ってくる。
「どこって……あ、でも今思えば、きっかけは鈴本くんだった」
「……おれ?」
「うん。保科くんが鈴本くんに教科書借りにきたとき」
1年のとき、私と鈴本くんが同じクラスで、保科くんは別クラスだった。保科くんの存在自体は知っていたけれど、接点もなかった私たちは話したこともなくて。
そんな私たちが知り合ったきっかけは、教科書を忘れた保科くんが鈴本くんに借りにクラスにきたこと。
ちょうどその少し前に鈴本くんは他の友達に既に教科書を貸した後だったから、たまたまそのすぐそばを通りがかった私が鈴本くんに声をかけられて保科くんに貸すことになったのだった。