フヘンテキロマネスク
「鈴本くん、私そのくらい自分でできるからいいよ。大したことないし体育館戻ってもらって大丈夫だから」

「単純に俺が暇なの。次の試合まで時間あるし」



有無を言わせない声で続けざま「はい、これで冷やして」と氷嚢を押し当てられる。ひや、とした感覚に肩がビクついてしまった。



「……ごめん、ありがと」

「俺が勝手にしたんだからいいよ」

「それでもありがとう」


お礼も言ったし、氷嚢も作れたからもうこれ以上ここにいる必要はない。私たちのチームは既に負けてしまったから今日はもう試合はないけど、日菜たちはまだ体育館で男子の応援をしてるはずだから早いとこ合流しよう。


そう結論づけたとき、脈絡もなく鈴本くんが「あ、そういえば」と声を発した。
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