フヘンテキロマネスク


なにがなんだかさっぱりだ。


勝手に近づいてきたと思えば急に一方的に遠のいて、遠ざかったと思えばまたすぐそばに。けれど決して掴めない。




「あ、俺そろそろ戻らないと。ちゃんと冷やしときなよ」



思い出したように保健室の壁掛け時計に目を向けた鈴本くんは、そう言うと足早に去っていく。


「……試合まで暇だからって嘘じゃん」



ひとりきりの保健室では、やけにひとりごとが響いたように思えた。
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