フヘンテキロマネスク
別れてからは視界に保科くんが映るだけでも、クラスメイトと騒ぐ声が聞こえてくるだけでも、思い出がチラつく度、気配を感じる度に虚しかった。


だけどいま、こうやって目で追いかけても不安定に感情が揺らぐことはもうない。



別れてから約1ヶ月っていう時間がそうしてくれたのか、もしくは保科くんのことを考える暇もないくらいに鈴本くんに困惑させられていたからなのかはわからないけれど。


でもこれですこし安心、なのかな。もしこのままずっと忘れられなかったらどうしようって馬鹿みたいなこと真剣に悩んでたから。


きっと、こうやってすこしずつ、でも確実に消えていくんだろう。

いずれはそうなることを、望んでいた。


―――望んでいたけれど、気持ちが薄れつつある今、なんとも言えない寂しさが胸に残る。


どうしてだろう、保科くんが初恋だったからかな。

恋とか愛とかまったくわかんない無知な子供で、まだまだ未熟だったから、簡単にこの恋を永遠だと信じてしまっていたのだと思う。


そう信じていたからこそ、自分の気持ちが薄れていくことがどうにも寂しい。
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