フヘンテキロマネスク
そして鈴本くんはディフェンスをもろともせずドリブルで切り込んでいって、あっという間にゴール射程圏内に入ると、ジャンプしてボールを投げる。


流れるように投げたそれは、寸分の狂いもなく、見事に綺麗な軌跡でシュートを決めた。



「キャー!鈴本くんかっこよ!」
「保科くんもかっこいいけど鈴本くんもやばい!」



お約束のように黄色い声があちらこちらで湧き上がる。そんな中で鈴本くんはいきなり私のいる方を見ると、口パクでなにかを伝えてきた。


……なんだろう、3文字だってことまではわかるんだけど。


読唇術もないし距離もあるんだからわかるはずもなくて首を傾げれば、微かに鈴本くんが笑ったような気がする。


……え、いや本当にどういうこと?笑われること私まったくしてないんだけど。


ひとりで困惑している私をよそに、鈴本くんはどこ吹く風で試合に戻っていく。


その後ろ姿を見て、なぜか今更鈴本くんって細く見えるけど思ってたより筋肉あるんだ、なんてことを思った。
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