フヘンテキロマネスク
「……ほんと、遥輝ってむかつく」
八つ当たりだとか負け惜しみだってのはわかってるけど、思わず睨む。
睨まれた当の本人は「え、渚そんなに試合負けたの悔しかったの?」と違う方向に勘違いしてるけど。
「そこまで本気だったなんて知らなかったよ。大丈夫、俺たちが負けた渚たちの分まで頑張るから」
「負けた、ってとこ強調してるのわざとでしょ」
「まさか。でも応援くらいしてよ、幼なじみなんだし」
「対戦チームが勝つように祈っとく」
そんな俺の憎まれ口を遥輝は何ともないように笑って受け流す。……そういう余裕のあるとこが真咲はよかったのかな。たぶん、他にも数え切れないくらいにあるんだろうけど。
2週間前の真咲との会話が蘇ってきて、またやるせなくなる。
「……渚?どうしたの?」
そうやって目敏く相手の機微に気づけるところも、俺にはないところだな。