フヘンテキロマネスク
「……なんでも。じゃあそろそろ俺行くね」
そのまま背中を向けて、特に行くところがあるわけでもないけど、なんとなく体育館の出口に向かって歩く。
途中で女子から話しかけられたけど、やんわりと躱した。
だめなんだ、いつもそう。
いちいち比べたってキリがないのに、女子に近づかれる度に、ああ違うって思ってしまう。最低だ。
遥輝ならきっと、誰かを無下にすることもないんだろうけど。
遥輝にもっと欠点があるような男ならよかったのに、幼なじみの贔屓目を抜きにしたって、遥輝がいい奴だってことはわかるから困る。
人見知り気味の俺とは違って社交的だし、積極的だし、男女分け隔てなく誰にでも平等だし、なんでもできるのにそれをひけらかさない謙虚さもあるから周りからも愛される。
どうしたって追いつけない。
それでも、追いつけないことをわかっていながら、真咲には俺を見てほしかった。
……もしも、遥輝より俺が先に伝えてたら。
そしたら、なにか変わってたかな。