フヘンテキロマネスク
そんなことを考えながらも、信号を渡って店が建ち並ぶ通りに足を踏み入れれば、こじんまりとしていて落ち着いた印象のお店が連なっていた。



「私ここらへん初めてきた」

「あー、こっち側より反対側の通りの方がいろいろあるしね。でも案外面白い店多いよ。会話厳禁の喫茶店とか」

「…それって面白いの?」

「うん。話ができない代わりに筆談帳が置いてあるんだけど、ほぼ自由帳みたいな扱いでいろんな人がそれぞれ書き残してったりするから、それ読むと結構面白い」

「へー確かにそれは面白そうかも。私も行ってみようかな」

「じゃあ今度一緒に行く?」

「えっ?」



思いがけない言葉に驚いて素っ頓狂な声が出た。



「会話厳禁ならふたりで行っても意味ないじゃん」

「だから筆談帳使うんだよ」


いや、だとしても絵的にそれはシュールじゃない?頭の中で想像してみるけど、途中で筆談が面倒になって飽きる未来しか見えない。


そんなニュアンスのことを言えば、鈴本くんは「俺は真咲となら何してても楽しいし飽きないけど」と不意打ちで言われて、私は咄嗟に言葉を返せなかった。
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