【SR】秘密
熱気の渦
漂うお線香の匂いとお経。
事務的にお焼香する人達へ、おうむ返しの様な会釈をひたすら繰り返す。
…………涙を流すなんて機能は、もうあたしを造るプログラムからは消去されたみたいだ。
白い菊に囲まれた写真を一瞥した。
どこにでもいる、フツーのおじさん。
遺影を覆うプラスチックが、葬儀場の照明を反射させてチラチラと顔を隠している。
死んでまでいるかいないかわからない存在感に、嘲笑した。
亡くなったのに、葬儀で泣く人は誰もいない。
ぎゅっとスカートを握り締める。
残されたのは、いつもハイエナの様な目をしたあの人と、あたし。
腐った人に頼るつもりはさらさら無い。
…………あたしは、一人で生き抜いてやる。
生きていくのに愛なんていらない。
お金さえあれば、どうとでもなるんだから…………。
あたしは、勝ち組になる。
絶対に。
誰にもこの人みたいに馬鹿になんて、させない。