【SR】秘密

……・……・……・……


俺は、桜が出れそうな時間を見計らって電話をかけた。


「……あぁ、今日は友人と二人で行くからよろしく頼むよ」


携帯の向こうで、待ってまーす、と弾む様な桜の声が聞こえてからパタンと閉じる。


「おい、貴一。顔が緩んでるぞ、しっかりしてくれよ」


呆れる顔をする友人の言葉を受けて、顔の筋肉を引き締めた。


「仕方ないだろう。本当に、可愛い子なんだ。健気で、聡明で……。」


「だーっ!耳タコだっつうの。それより、本当に協力は得られそうなのか、その桜って子。
昨日の夜連絡寄越せって言ったのに、今日の朝方にやっと寄越すし……。
遊びじゃないんだぞ、しっかりしてくれよ」


「わかってる。大丈夫だと思う、桜は他に比べて全然まともだったし。
昨日は上司を送ってたんだ。
仕方ないだろう。
俺だって仕事の合間にこうして付き合ってやってるんだ、そうぶつぶつ言うな」


昔から刑事に憧れて見事夢を果たした友人の肩をポンと叩いた。


こいつは熱が入ると止まらなくなるんだ。


「あ、あぁ……悪いな。あの悪夢を思い出すとな、気が急いちまう。
慎重にならないとな」


悪夢という言葉に俺は顔をしかめる。


あれは酷かった。俺の身近でも何人か……。


「悪いな、その娘に頼むのは気が引けるんだが」
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